いつもいつも意識の殆どをネットの海に繋がる四角い箱に費やしている彼は、たまに思い出したようにべたりと纏わり付いてくる。
今まで触れ合ってなかった分、そしてこれからも長い時間その箱へ向くため貯めておくとでも言うように、やたら、一日中、ぴったりと張り付いてくるのだ。
後ろからぎゅううと抱き着かれ、肩に頭を埋められた私は身動きも出来ない。
「…あの、私お腹空いたんですけど」
「……」
「シンタロー?シンタローくーん?シンタローさーん?」
呼び掛けても呼び掛けても返事がない。そのままシンタロー殿、シンタロー様、シンくん、シンちゃん、と思いつく限りの呼称で呼び続ければ、うるさいとでも言うように、肩に埋められた頭がぐりぐりと押し付けられた。パサついた黒髪が首筋をさわさわなぞって、くすぐったい。
「シンタロー、ねー、お腹すいたー。ねーってばーあー」
「……」
「……ね、え、」
以前ぐりぐりと押し付け続ける彼の頭に、文句を言うようにごつんと頭を後ろに倒しぶつければ、シンタローの右手だけが腰から外される。がさごそとベッドの上を探るその右手にんんん?と疑問を持っていれば、探し当てたらしいそれを胸の前へと差し出された。
赤いラベルに黒い飲料。
…コーラじゃお腹は膨れないよ。
「シンタロー…本当に、ねえ。もうお昼」
「……」
「シンタローさあん、返事くらいしてくださいよー…」
「…うるさい」
やっと口をきいた、と思ったらなんて冷たいお言葉。そのまま身体を横に倒すシンタローに少しだけ身体が強張った。そうすると彼に抱えられている私も必然的に倒れるわけで。二人してぼすん!とベッドの上に横になる。「えー…」だなんて乾いた声を出せば、私が抵抗しないのを良いことに、ぐるりと身体を半回転させられた。同じ位置で合わさる顔と顔。いつも通り隈に縁取られた人相の悪い目付きだけれど、真っ黒な目の奥が微かに熱を含んでいた。
「あと、1時間」
寝起きにしてははっきりとしすぎている顔で、寝起きのような言葉を吐かれる。
続いて近付いてくる顔に、これは夕飯まで何も口にできないんだろうなあ、なんて観念し、瞼を閉じた。